五月の上越国境付近の山         23M 岩永

2,3年前から5月に越後三山の最高峰、中の岳に行くことを計画していたが、雪が多く登
山口の十字峡までの道路が通れないのであきらめていた。ところが今年は温暖化のため
か雪が少なく十字峡まで車が入れるとのことで念願が叶いそうであった。あとの問題は
体力のみである。名古屋からの移動日に前後1日ずつ、2日目が中の岳、次の日が予備日、
4日目は軽く飯士山、5日目は一ノ倉岳を計画した。

● 期日:2007年4月29日(日)〜5月4日(金)

● 山名:4月30日 中の岳(2085m)
      5月2日  飯士山(1112m)
      5月3日  一ノ倉岳(1974m)

● メンバー:23M 岩永、元の会社の友人3人

      記録

4月29日(日)晴れ −移動−
拳銃立てこもり事件で有名になった名古屋の東、長久手町にある会社の駐車場を8時に
出発。よく晴れていて中央道からは南アルプス、長野道からは北アルプスの景観を堪能
した。約6時間半かけて、中の岳の登山口、登山センターに到着。昨日、開業したばかり
のセンターの2階にある広い登山者用の部屋に泊まる。床が固いこともありなかなか眠ら
れない。

4月30日(月) 晴れ −中の岳−
累積標高差1760m、コースタイム10時間半、12時間はかかるものと覚悟を決めて5時20分
出発。最初から急な登りだ。意外にも雪は1000mまでは付いていなかった。1000
mを越え
ると日向山の雨量観測小屋や八海山のどっしりした入道岳が見えてくる。主稜線の小屋に
泊まった人達とすれ違う。日向山の手前と主稜線への登りは急だ。登るにつれて上越国境
付近の山々が見えてくる。頂上から守門、浅草、燧、至仏、平ヶ岳、武尊、谷川、苗場など
が見える。近くには八海山、越後駒、巻機などが輝いている。中でも荒沢岳のピラミッダル
な姿は魅力的だ。越後駒は頂上がちょこんと見えるだけでかわいそうだった。帰りに日向
山からゆっくりと眺めると中の岳は魅了的な山容とは言いがたいが、どっしりとした大きな山
である。登山センターには17時前に着いた。11時間20分だった。
筆者は遅れながらとはいえ雪が付いた山をほぼコースタイムどおり歩けた満足感が沸いて
きた。今晩もここの硬い床に寝るのは遠慮したいので登山センターのおばさんに教えてもらっ
た、三国(さぐり)川ダムの下流にある五十沢(いかざわ)温泉旧館に行った。
なんと素泊まり1泊2200円だ。8帖2間を使わせてもらった。それに温泉は源泉掛け流し。
帰り湯は近所の人の社交場となっている。この日は疲れたこともあり熟睡できた。

5月1日(火)小雨、曇り −休養−
今日は天気が悪いとのことで休養。小千谷へ行き、小千谷縮を見ようとちぢみ会館へ
行ったが何もない。気を取り直して「へぎそば」を食べに行く。「わたや」という店に入ったが、
老舗らしくしばらく待たされた。美味しい蕎麦だった。
少し早かったが今日の宿、駒の湯へ行く。宿の前から越後駒がよく見える。この宿も427日
オープンしたばかりだ。山の中の一軒宿で、ランプの宿である。なんと数名の
フランス人が来
ていた。囲炉裏のある部屋で寛ぐ。ここの湯も源泉掛け流しである。
ただし、湯温が33度、したがって隣には熱い湯船が並んでいる。たそがれ時、外に出ると
十四夜の月が煌々と照っていた。そしてオカリナの音が響いてきた。「浜辺の歌」だった。
曲が終わったので拍手をすると音の主は中年のご婦人だった。ご母堂の四十九日法要
を越後湯沢で済ませ、新潟の亀田に帰る途中だとのこと。小さな美術館をやっておられるらし
い。談話室で皆に「コンドルは飛んでいく」、「小さいグミの木」、「星めぐりの歌」などを聞かせ
てもらった。ご主人は二胡を演奏されるらしい。いいご夫婦だ。山と温泉と音楽と月、なんと贅
沢なことだろう。

5月2日(水) 曇り、雨、曇り −飯士山−
今日も天気が悪いと判断し、土樽からの一ノ倉岳への登山口と土樽山荘の場所を確認
する。しかし、青空が広がり、天気回復の兆しが見えてきたので飯士山へ登ることに
する。越後湯沢の一帯は異常な光景である。雨後の筍みたいにけばけばしい高層ビル
が乱立している。スキー客などを当てにしたホテルやマンションであろう。スキー人
口が減った昨今、経営は苦しいのではないだろうか。
岩原(いわっぱら)スキー場へ。10時10分発。面白みのない雪のないスキー場をリ
フト終点まで上がるとやっと山道となる。イワウチワ、タムシバ、ショウジョウバカマ
が咲き誇っている。しかし、半分以上登った付近で雨が降り始める。誰もいない雨
の頂上をすぐあとにする。約3時間で戻ってきた。ガランとしたロッジの軒先を借り
て濡れた衣類を着替える。
今日の宿、貝掛温泉へ向かう。途中、広大な駐車場が現れ、そこに多くの車が駐車し
ていた。みつまたスキー場だ。ロープウエイで客を山の上に運んでいる。みつまた、
かぐら、田代のスキー場がつながっていて、この時期でも上の方は雪が十分にあるら
しい。また、苗場スキー場ともゴンドラでつながっているとのこと。急な坂を下り、
細い橋で清津川を渡って貝掛温泉へ。ここも源泉掛け流しの温泉。湯温は36度。ホウ
酸泉で目にいいらしい。

5月3日(木) 晴れ、曇り −一ノ倉岳−
谷川岳ロープウエイの駅は大きな駐車ビルとなっていた。このロープウエイは750m
から1310mまで10分で運びあげてくれる。予定していた天神峠までのリフトはまだ
動いていない。スキー客はほとんどいない。この前来た時は、ハーフパイプにもゲレ
ンデにも人が溢れていたのに。7時55分、雪の中の踏み跡を辿って登りだす。避難小
屋までに踏み跡がわかりにくい箇所もある。案の定、下りにはここで踏み跡をはずし
てしまった。オキノ耳、トマノ耳を過ぎると静かな残雪の山となる。しかし、踏み跡
も薄くなり藪を掻き分ける。一ノ倉沢を見下ろせるノゾキから下を見ると谷川特有の
スラブや草付きがほとんど平らに見える。ひと登りで一ノ倉岳だ。帰り道、とどろく
轟音に振り返ると一ノ倉岳付近からノゾキ沢への雪崩が土砂を交えて滑り落ちて行っ
た。ロープウエイの駅に着いたのは16時10分だった。
今日の宿、駅前の土合ハウスには初めて泊まる。昭和34年からやっているそうで親父
さんは山の家の中島喜代志さんや高波吾策さんの話しをして昔を懐かしがっていた。
学生時代には中島さんに現地連絡所をお願いしたことを覚えている。

5月4日(金)晴れ  −移動日−
車で一ノ倉沢とマチガ沢を見物する。マチガ沢には同期の山田君、OBの辻さんと亡
くなった土岐君の4人で雪上訓練をして東尾根を登ったことがある。今は両方の沢の
入り口に入山禁止の札がぶら下がっていた。

(写真の説明)
      日向山から中の岳
      駒の湯から越後駒ケ岳
      一ノ倉岳から谷川岳


日向山から中の岳

駒の湯から越後駒ケ岳

一ノ倉岳から谷川岳