フランス シャモニー スキー行

                      3月25日

3月9日〜3月17日      石松隆夫 

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 以前、夏にトレッキングでシャモニー行きました。ここは西ヨーロッパでの最高峰4807mのモンブランの麓であり 又第一回冬季オリンピックの開催された由緒ある山とスキーのメッカでもあるのです。標高3800mのエギュードミディ (エギューは針峰の意)の頂にロープウエイで上がると周りは岩と雪と氷の世界で、氷河の上に聳える針峰群の中でも、 目の前のモンブランやグランドジョラス(4208m)・ドリュウの西壁(3754m)は圧巻でした。
 今回のスキーは日本のフェロウトラベルと云うスキーツアーの会社の企画にエギュードミデからのガイド付き20キロメートル のバレブランシュ氷河滑降があったので、昔からの山の友人と参加することにしました。参加者は私と岩手県の友人小玉夫妻の3人、 他に応募したのは一人で計4名です。3月9日、成田空港に行くとロビーに担当者がいて航空予約券を渡され、チューリヒで乗り換え、 ジュネーブ空港に着くとそこに会社から日本人の出迎えが来ていて、シャモニーのホテルまで案内してくれるとのことでした。 12時40分発のスイスエア機で、チューリヒ乗り換え、ジュネーブ着19時半、時差を入れると15時間です。出迎えの日本人二人 に会い、ここで初めてもう一人の参加者に会えました。うら若き?女性でした(名古屋からの参加)。皆、預けた荷物を受け取り ましたが、小玉夫人のトランクだけ有りません。中継地のチューリヒに有るのが判り翌日午後になりそうです。車でシャモニーへ むかい、1時間半走ってホテルアルピナ着です。  翌日の10日、朝起きてテラスにで上を見ると正面にエギュードミディ、右にモンブランが朝日に輝いています。ホテルでの朝食が 終わるとすぐ昨日の日本人ガイドが来て登山・スキー用品の店に案内してくれました。ここではレンタルも扱っていて高価な新製品も 沢山並んでいて自由に選ぶことが出来ます。我々は初めからスキー板ははレンタルと決めていたので、良い板を選べました。 小玉夫人は自分の荷物が未だ届いてないためウエアも借りようとしましたが皆大きすぎて合いません。やむなく、 本日のスキーは取りやめ、ウインドショッピングにしました。間もなくフランスの現地スキーガイドで唯一人の日本人横山氏が見え (彼は30年フランスに滞在している)我々を周辺のスキー場に案内をすることになりました。 シャモニーは急峻な谷の中の小さな町で周辺の山岳地帯は森林帯上部は殆どスキー場でその上が岩と氷の針峰群です。 氷河は町の近くまで迫っています。慣れない日本人が沢山のスキー場を回るにはガイドを付けるのが効率的だと思いました。 こうして二日間、横山氏に付いて我々はは標高差1000から2000mの大きなスキー場を3カ所滑り回り、雄大な針峰群の景色を堪能 することが出来ました。昼食はゲレンデのレストランで大抵、スープ・チーズ料理・サラダ・パン・ワイン等で、日本円2500円前後 です(横山氏に奢っているので実際にはもう少し安い)。 10日午後には小玉夫人の荷物も届き、11日から全員一緒に滑りまくった 感じです。夜はホテルのレストランで乾杯。天候が安定しているので12日のエギュードミディからのバレブランシュ氷河滑降が決ま りました。 小玉夫人は日本でのトレーニングのやりすぎで膝に痛みがありましたが、チャンスは二度と来ないと参加することに しました。
 12日朝、現地担当日本人の高橋嬢と我々4人はエギュードミディのロープウエイ下でフランス山岳スキーガイドムッシュ.ションと 会いここで全員ハーネスを渡され腰に付けました。エギュードミディからの氷河滑降は技術的にはさほど難しいものではありませんが、 スキー場ではなくクレパス等危険なところがあるため山岳スキーガイドの同行が義務づけられ、又ハーネスは頂上出口から細い氷の 急斜面をスキー靴で下るため互いにザイルで繋ぎ、ガイドが一番後ろで確保するために必要なのです。
 ロープウエイの下の広場は頂に上がる人でいっぱいで、全員が腰ベルトを付けています。表示板の山頂の気温は摂氏-11度と出て います。1時間ほど待って10時半やっとキャビンに収まり、途中乗り継ぎ30分ほどでエギュードミディ3800m頂に着いてしまいました。  天気はよいし前回来た夏の時より更に白く峰峰が輝いています。
 支度をして岩をくりぬいたトンネルを抜けると雪と氷の世界で急な稜線に1m幅で左右にロープが張ってあり、片手でスキーを 担ぎ片手でロープにつかまり氷の斜面を下ります。ガイドのムッシュ.ションはスキー靴にクランポンを付け後ろで皆に繋がって いるザイルを握っています。道に階段状のステップが切られてないので道の両側のロープが頼りで冷や汗ものですが、クランポンを 付けてる人はすいすい下っていきます。危険なので人の動きは遅く込み合っています。200メートルほど下って狭い雪の台地に着き ほっとして周りを見るとすぐ下に50メートルほどの急斜面に続いて広い雪の斜面がが広がっていてそれがバレブランシュ氷河の谷に 回り込んでいるのが判ります。我々はこの全長20キロ標高差2000メートルの斜面を滑るのです。皆ここでザイルを解きスーキーを 付けますがこの時の緊張感と期待感が何ともいえません。12時前、スタートです。先頭のガイドがゆっくり急斜面に入っていき続いて 小玉夫人も滑り出しましたがが極度の緊張のためか、尻餅を付いてしまいました。しかしそれで緊張がほぐれその後は順調です。 この辺は氷の上に粉雪が堅く着いていて快適に滑れます。やがて氷河地帯に入って来るとクレパスを避けて滑りますが、ガイドは 時々停まっては下手な英語で山の説明をしたり向うがイタリア領だと教えてくれたりします。エギュードミディの頂からイタリアの 山にこの氷河の上を通ってながーいロープウエイが懸かっていてそのキャビンが我々の遙か上に豆粒のように見え、又この辺からは グランドジョラス(4208m)が谷の向うに大きく迫ってきてます。このコースはがむしゃらに滑るのではなく景色を楽しむコースで、 これはスキーでしか味わえないものなのです。氷河は大きなもので、急斜面有り、氷塊の滝、アイスバーン、こぶ斜面、クレパス等 あらゆる状態にぶつかりますがその間をガイドが我々をリードして滑り抜けていきます。氷河の斜度も次第に緩くなり粉雪もザラメ雪 に変わり暖かくなってくると安全な場所で休んでいるグループが多くなりました。我々のガイドは時々休むだけでどんどん滑って いきます。足もだんだんくたびれてくる頃、気が付くと右の雪の急斜面上にドリュ(3754m)の板みたいな西壁(800m)があり ました。ここはモンタンベールと云いシャモニーから登山電車が来ていて、登山家達はここからドリュやグランドジョラスを目指す のです。ここから西壁を見上げているとクライマー達の心意気が伝わってくるようでした。我々のスキーツアーもここで終わりますが、 雪が多ければ下の町まで更に滑っていけるようです。電車の駅に行くには、スキーを担いで50メートルほど階段を登りそこから ロープウエイで150メートルほど登ります。スキーを脱いだのが3時前で、3時間のツアーでした。ここでガイドのムシュ.ション に皆でお礼を言い別れてから持ってきた遅い昼飯といってもパンとか飲み物をとり、電車に乗って帰ってきましたが、みんな大満足です。 4日めの13日はまたスキーガイドの横山氏がシャモニーから車で40分ほどのコンタミンと云うスキー場に案内してくれました。 大きなスキー場ですが日本人はいませんでした。 14・15日の二日間はガイド無しですが慣れてきていたので未だ行っていなかったスキー場や、もう一度行きたいところをバスで 回り滑ってきました。
 シャモニーのスキー場は大まかに言って雪のない麓から雪の付いている斜面にロープウエイとリフトを付けそこを滑ると スキー場になってしまう感じで、圧雪車は入っていますが部分的です。特別にスキー場として切り開いた感じはないのですが 雪崩の出るような斜面には圧縮空気を吹き出す大きな筒が岩の間から出ていて大雪の際は大砲のように空気を吹き出し振動で 雪崩をあらかじめ起こさせてしまうようです。コースにはフランス語、ドイツ語、英語で「安全」「やさしい」「難しい」 「非常に難しい」と表示され「非常に難しい」コースには「危険」「パトロールの範囲外」「自己責任で行動」」と看板が出て いるのが印象的でした。ちなみに急なこぶ斜面・クレパスのある斜面は「自己責任」の範疇です。  シャモニーでの六日間、日本とは別のスキーをたっぷり楽しむことが出来ました。
                                  終わり
                                   

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